PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
生理不順・妊活がうまくいかない、その背景にあるかもしれません。
大阪市北区・南森町の婦人科で、まずはご相談ください。
こんにちは。ふくだあやレディースクリニック院長の福田綾です。
「生理が2〜3ヶ月こない」「ニキビが治らない」「妊活を始めたけれどなかなか授からない」——このようなお悩みを抱えて受診される患者様が、当院にも多くいらっしゃいます。
先日も20代後半の患者様で、「生理不順を放置していたら、妊活を始めたときにPCOSと初めて診断された」という方がいらっしゃいました。PCOSは女性の約8人に1人に影響するとも言われる、決して珍しくない疾患です。しかし、症状が多様なためなかなか気づかれず、診断まで時間がかかることも少なくありません。このページでは、PCOSについて詳しく解説するとともに、当院での診療の流れもご紹介します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
What is PCOS?
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは、卵巣の中で卵子が成熟・排卵されにくくなり、多数の未熟な卵胞が卵巣内に留まってしまう状態です。単なる「卵巣の病気」ではなく、ホルモンバランスと代謝が複雑に絡み合う全身性の疾患として理解されています。
名前に「嚢胞(のうほう)」とありますが、卵巣がんのような病的な嚢胞ができるわけではありません。超音波検査で卵巣に小さな卵胞が多数みられる「多嚢胞性卵巣所見」が特徴のひとつです。
PCOSの背景には、男性ホルモン(アンドロゲン)の過剰分泌と、インスリン抵抗性(インスリンの働きが弱まる状態)が深く関わっています。インスリン抵抗性が高まると、膵臓がより多くのインスリンを分泌しようとし、それが卵巣を刺激して男性ホルモンをさらに増やすという悪循環に陥ることがあります。
また、2026年5月には国際的な専門家コンセンサスにより「PMOS(多内分泌代謝性卵巣症候群)」という新しい病名も提案されました。これはPCOSが「卵巣だけの問題ではなく、ホルモン・代謝の全身疾患である」という認識を反映したものです。診断基準・治療法は変わりませんので、今PCOSと診断されている方もどうぞご安心ください。詳しくは下記の名称変更についてをご覧ください。
Name Change: PCOS → PMOS
PCOSから「PMOS」への名称変更について
これまで「PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)」と呼ばれてきた病気が、2026年に「PMOS(多内分泌代謝性卵巣症候群)」という新しい名前に変わりました。この変更は、世界中の56の医療団体と、22,000人以上の患者さんや医療専門家の意見を集めて決められたものです。
🔵 なぜ名前が変わったのですか?(古い名前の問題点)
これまでの「多嚢胞性卵巣症候群」という名前には、次のような課題がありました。
- 医学的に正確ではなかった:「多嚢胞性」は「たくさんの嚢胞(のうほう)がある」という意味ですが、実際に卵巣に病的な嚢胞ができるわけではありません。超音波検査で見える小さな卵胞は、正常な卵胞であり、嚢胞ではありません。
- 病気の本質を表していなかった:この病気は卵巣だけの問題ではなく、ホルモンバランスや代謝(体のエネルギーの使い方)など、体全体に関わる病気です。しかし古い名前では卵巣の問題だけに焦点が当たっていました。
- 誤解やスティグマ(偏見)につながっていた:調査では患者さんの86%が「新しい名前が必要」と回答しました。古い名前によって混乱したり、恥ずかしい思いをしたり、診断が遅れたりする経験をした方が多くいらっしゃいました。
🟣 新しい名前「PMOS」の意味
- Polyendocrine(多内分泌):複数のホルモンに関わる問題があることを示します。
- Metabolic(代謝性):体のエネルギー代謝や血糖値などに影響があることを示します。
- Ovarian(卵巣性):卵巣の機能にも関わることを示します。
- Syndrome(症候群):いくつかの症状が組み合わさった病気であることを示します。
🟡 これによって何が変わりますか?
- 診断や治療は変わりません:病気そのものは同じで、診断基準や治療法は変わりません。今PCOSと診断されている方も、これまでどおりで大丈夫です。
- より正確な理解につながります:この病気が卵巣だけでなく、ホルモンや代謝など体全体に関わることが、名前からも分かるようになります。
- スティグマの軽減が期待されます:より正確で科学的な名前により、誤解や偏見が減ることが期待されています。
- 移行期間があります:しばらくの間は、「PCOS」「PMOS」の両方の名前が使われることがあります。
🟤 覚えておいていただきたいこと
- およそ8人に1人の女性がこの病気を持っているとされています。
- 新しい名前は、患者さんの声を反映して決められました。
- 病気の内容や治療法は変わっていません。
- 名称変更について、当院でも診察の際に丁寧にご説明いたします。
「名前が変わって不安になった」「自分の診断はどうなるの?」——そんなご心配はいりません。ご不明な点がありましたら、遠慮なく医療スタッフにお尋ねくださいね。
Symptoms
🔵 こんな症状ありませんか?
一つでも当てはまる方は、PCOSが関係しているかもしれません。早めに婦人科を受診してみてください。
- ✅ 生理周期が35日以上、または月経が2〜3ヶ月以上こない
- ✅ 生理が毎月きても、排卵しているかどうかわからない
- ✅ 大人になってもニキビ・肌荒れが治らない
- ✅ 顔や腕・お腹の産毛・体毛が濃い気がする(多毛)
- ✅ 太りやすい・なかなか体重が落ちない
- ✅ 血糖値が高めと言われたことがある
- ✅ 妊活を始めたが、なかなか妊娠しない
- ✅ 超音波検査で「卵巣に小さな嚢胞がたくさんある」と言われた
- ✅ 以前PCOSと診断されたが、その後治療を受けていない
「生理不順くらい体質だから仕方ない」と思って長年放置されている方も多いのですが、PCOSは早めに気づいて適切にケアすることで、妊娠への道筋や長期的な健康リスクをうまくコントロールできる疾患です。気になる症状がひとつでもあれば、どうぞ気軽にご相談くださいね。
Diagnostic Criteria
PCOSの診断基準
日本産科婦人科学会(JSOG)の基準では、以下の3項目のうち2項目以上を満たし、他の疾患を除外した場合にPCOSと診断されます。
① 月経異常・排卵障害
月経周期が35日以上の希発月経、または無月経。排卵が不規則であることが確認される状態。「生理がこない」「生理の間隔がバラバラ」が最も多い訴えです。
② 多嚢胞性卵巣所見
超音波検査で卵巣内に直径2〜9mmの小卵胞が12個以上みられる、または卵巣の容積が増大している状態。AMH(抗ミュラー管ホルモン)が高値を示す場合も診断の参考にします。
③ 男性ホルモン(アンドロゲン)高値
血液検査でテストステロンなど男性ホルモンが高値。ニキビ・多毛・脂性肌などの症状として現れる場合もあります。日本人女性は欧米と比較して数値が低くても症状が出ることがあります。
3項目すべてが揃わなくてもPCOSと診断されることがあります。また、甲状腺疾患・高プロラクチン血症など、月経不順を引き起こす他の疾患を除外することも重要です。当院では血液検査・超音波検査・必要に応じたホルモン精査で総合的に評価します。
Causes & Risk Factors
🟡 原因・リスク因子
PCOSの原因は、ひとつではありません。遺伝的な体質、インスリン抵抗性、ホルモン分泌のバランス異常など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
インスリン抵抗性との関係
PCOSの患者様の多くに「インスリン抵抗性」がみられます。インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分に機能しない状態です。インスリンが高い状態が続くと、卵巣が男性ホルモンをより多く産生するよう刺激され、排卵障害が悪化するという悪循環が生まれます。肥満があるとインスリン抵抗性が強まりやすいため、適切な体重管理がPCOSの改善にもつながります。
主なリスク因子
- 遺伝的背景:お母さんや姉妹にPCOSや月経不順がある方は、リスクが高まる傾向があります
- 肥満・体重増加:インスリン抵抗性を高め、症状を悪化させます。ただし痩せ型の方でもPCOSは発症します
- 生活習慣:運動不足・偏った食生活・睡眠不足はインスリン抵抗性を悪化させ、ホルモンバランスにも影響します
- ストレス:副腎からのアンドロゲン分泌を促す可能性があり、症状を増悪させることがあります
「なぜ私が?」と思われる方も多いです。リスク因子がなくても発症することがありますし、自分を責める必要はまったくありません。大切なのは、症状に気づいて早めに相談することです。
Diagnosis
診断方法
当院では以下の検査を組み合わせて、PCOSの診断と全身状態の評価を行います。
① 問診
月経周期・月経量・ニキビや多毛の有無、体重変化、妊娠のご希望などを丁寧にお聞きします。「こんなことまで言っていいの?」と思うようなことでも、遠慮なくお話しくださいね。
② 経腟超音波検査(エコー)
両側の卵巣の大きさと内部の卵胞数を確認します。多嚢胞性卵巣所見(小さな卵胞が多数みられる状態)は診断の重要な根拠のひとつです。初診・未性交の方は経腹エコーで対応しますのでご安心ください。
③ 血液検査(ホルモン検査・代謝検査)
LH・FSH・テストステロンなどのホルモン値、AMH(卵巣予備能の指標)、血糖値・空腹時インスリン・脂質などを測定します。甲状腺ホルモン・プロラクチンも同時に確認し、他の疾患を除外します。
④ 基礎体温・排卵確認
基礎体温の記録から排卵の有無を推測できます。超音波による卵胞モニタリングを組み合わせて、実際に排卵が起きているかを確認することもあります。妊活中の方には特に重要な評価です。
Treatment
🔵 治療法
PCOSの治療は、「妊娠を希望するかどうか」によってアプローチが大きく変わります。患者様のライフプランに合わせて、最適な方法をご提案します。
① 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP/低用量ピル)【保険適用】
妊娠を希望しない時期の基本的な治療です。月経を人工的にコントロールして子宮内膜を適切にリセットすることで、無排卵による子宮内膜の過剰増殖を防ぎます。ニキビ・多毛など男性ホルモン過剰による症状の改善にも有効です。月経困難症合併例には保険適用があります。料金については料金ページをご参照ください。
② メトホルミン【保険適用(2型糖尿病の適応)】
インスリン抵抗性が高いPCOS患者様に使用される薬です。インスリンの働きを改善することで、卵巣からの男性ホルモン過剰分泌を抑え、月経周期の正常化や排卵改善が期待できます。日本ではPCOSへの保険適用はありませんが、インスリン抵抗性を伴う場合に医師の判断で処方されることがあります。吐き気などの消化器症状が出ることがありますが、少量から開始することで多くの場合に軽減できます。
③ 排卵誘発療法(妊娠を希望する方へ)
妊娠を希望される方には、排卵を促す治療(排卵誘発)をご提案します。
- クロミフェン(内服薬):最初に選択されることが多い排卵誘発薬。内服で排卵を促します。多胎妊娠のリスクがわずかにあるため、超音波でモニタリングしながら使用します【保険適用】
- ゴナドトロピン療法(注射薬):クロミフェンで排卵が難しい場合に使用する注射による排卵誘発。より細やかな管理が必要なため、不妊専門施設と連携して行うこともあります【保険適用】
- 体外受精・顕微授精:排卵誘発だけでは妊娠が難しい場合、不妊専門施設への紹介をご案内します
④ 生活習慣の改善
すべての治療の土台となります。特に肥満を伴うPCOSでは、体重を5〜10%減らすだけで月経が回復し、自然妊娠が叶うケースも報告されています。
- 食事:血糖値の急激な上昇を避ける低GI食を意識し、食物繊維・タンパク質をバランスよく摂る
- 運動:週3〜5回の有酸素運動(ウォーキング・水泳など)がインスリン抵抗性の改善に有効
- 体重管理:BMI改善がホルモンバランスの改善に直結します。一人で悩まず、当院でサポートしながら一緒に取り組んでいきましょう
- 睡眠・ストレス管理:睡眠不足や慢性ストレスはホルモンバランスを乱します。生活リズムを整えることも大切です
Fertility & PCOS
🟣 PCOSと妊娠・不妊治療への道筋
「PCOSがあると子どもを授かれないの?」と不安になる方も多いと思います。でも、PCOSは不妊の原因のひとつではありますが、適切な治療で妊娠・出産される方はたくさんいらっしゃいます。必要以上に心配しないでくださいね。
PCOSが不妊の原因となるメカニズム
PCOSでは排卵が不規則または起こりにくいため、妊娠のタイミングが自然にはつかみにくい状態です。排卵がなければ受精のチャンスもないため、不妊につながります。ただし、「排卵が起きていない」のであれば、排卵誘発によって妊娠の可能性を高めることができます。
当院での不妊治療への道筋
- Step 1:ホルモン検査・超音波検査で排卵の状態とPCOSの程度を評価します
- Step 2:生活習慣の改善(体重管理・食事・運動)を並行して取り組みます
- Step 3:排卵誘発薬(クロミフェン)で排卵を促し、タイミング法を行います
- Step 4:クロミフェンで効果が不十分な場合はゴナドトロピン注射療法へ進みます
- Step 5:さらに高度な生殖医療(体外受精など)が必要な場合は、不妊専門施設へご紹介します
妊娠を希望される方は、早めにご相談ください。年齢・卵巣予備能(AMH値)・PCOSの程度を総合的に考慮して、最適なタイミングと方針を一緒に考えていきます。また、不妊・妊活のページや月経困難症(生理痛)のページもあわせてご覧ください。
Long-term Risks
⚠️ 放置すると起こりうること
⚠️ PCOSは「生理不順だけの問題」ではありません。長期間放置すると、全身にさまざまな影響が及ぶことがあります。早めの対処が将来の健康を守ります。
- 2型糖尿病:インスリン抵抗性が長期間続くことで、血糖値の調節が難しくなり、2型糖尿病へ移行するリスクが一般女性に比べて約3倍高いとされています。定期的な血糖検査が大切です
- 脂質異常症・心血管疾患:コレステロールや中性脂肪の異常が起こりやすく、動脈硬化・高血圧・心疾患のリスクが上昇します。長期的な生活習慣病予防の観点からの管理が必要です
- 子宮体がん:排卵がない状態が続くと、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されないまま子宮内膜がエストロゲンにさらされ続けます。これにより子宮内膜が過剰に増殖し、子宮体がんのリスクが高まります。低用量ピルや定期的な子宮内膜の評価で予防できます
- 不妊の長期化:排卵障害を放置するほど、妊活の開始が遅れ、年齢とともに卵巣予備能も低下していきます。妊娠を希望する場合は早めの相談をお勧めします
- メンタルヘルスへの影響:月経不順・ニキビ・体重増加などが続くことで、自己肯定感の低下やうつ・不安との関連も報告されています。「身体だけでなく心もつらい」という方は、どうぞ一人で抱え込まずご相談ください
When to Visit
受診のタイミング
- ✅ 生理の間隔が35日以上、または2〜3ヶ月生理がこない
- ✅ 成人してもニキビ・脂性肌・多毛が気になる
- ✅ 体重が増えやすい・なかなか落ちない
- ✅ 妊活を始めて半年以上たつが妊娠しない
- ✅ 健診や他院で「卵巣に嚢胞がある」「AMHが高い」と言われた
- ✅ 以前PCOSと言われたが、その後受診していない
- ✅ 血糖値が高め・脂質異常を指摘されたことがある
「まだ妊娠を考えていないから」「生理がなくてもとくに困っていないから」と放置されている方が多いですが、長期的な健康リスクの観点からも早めの受診をお勧めします。初診でも当日に超音波検査と血液検査ができますので、「今日から」一歩踏み出していただけます。
FAQ
🟤 よくあるご質問
Doctor's Message
院長より — 受診をためらっている方へ
「生理が不規則なのはずっとそういう体質だと思っていた」「ニキビはストレスのせいだと思っていた」「まさか自分がPCOSとは思わなかった」——そういうご感想を、診察室でよく耳にします。
PCOSは症状が多様で、一見バラバラに見える不調が実は同じひとつの疾患につながっていることが多い病気です。生理不順・ニキビ・体重の悩み・妊活の困難——それらをひとりで抱えて、「どこに相談していいかわからない」と何年も過ごしてきた方も少なくありません。
当院は大阪市北区・南森町にある女性医師の婦人科専門クリニックです。PCOSの診断・治療はもちろん、妊活のご相談・生活習慣改善のサポートまで、患者様のライフステージに合わせて寄り添いながらお手伝いします。「まだ妊娠は考えていないけど、体のことが気になる」という方も大歓迎です。
「このくらいで受診していいのかな」と思う必要はまったくありません。些細な疑問でも、どうぞ遠慮なくおっしゃってください。あなたが毎日を快適に過ごせるよう、全力でサポートいたします。
ふくだあやレディースクリニック 院長 福田 綾(産婦人科専門医)
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※ 本ページの内容は、日本産科婦人科学会ガイドライン・最新の医学的エビデンスに基づき、院長・福田綾が監修しています。個々の症状・治療については必ず医師にご相談ください。