骨盤内炎症性疾患(PID)
下腹部の痛みや発熱、放置は禁物です。
大阪市北区・南森町の婦人科で早めの検査・治療を。
こんにちは。ふくだあやレディースクリニック院長の福田綾です。
「下腹部がなんとなく痛い」「おりものが増えて臭いも気になる」「微熱が続いている」——こうした症状の背景に、骨盤内炎症性疾患(PID)が隠れていることがあります。PIDは、腟や子宮の入口にいた細菌が子宮・卵管・卵巣・骨盤の奥へと広がって炎症を起こす病気です。
PIDが怖いのは、症状が軽いまま進行して、気づいたときには卵管に炎症の傷あとが残り、将来の妊娠に影響してしまうことがある点です。とくにクラミジアが原因の場合は自覚症状が乏しく、知らないうちに広がっていることも珍しくありません。だからこそ、早めに検査を受けて、きちんと治療を完了させることがとても大切です。気になる症状がある方は、どうか我慢せずご相談くださいね。
What is Pelvic Inflammatory Disease?
骨盤内炎症性疾患(PID)とは
骨盤内炎症性疾患(PID:Pelvic Inflammatory Disease)とは、腟や子宮頸管にいた細菌が、子宮内膜・卵管・卵巣・骨盤腹膜など、骨盤の奥にある臓器へと上行して(上に広がって)炎症を起こす病気の総称です。炎症が及ぶ場所によって、子宮内膜炎・卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎などと呼ばれることもあります。
原因となる菌として最も多いのは、クラミジア・トラコマチスと淋菌という性感染症の病原体です。これらに加えて、大腸菌などの一般細菌や、腟内の常在菌(嫌気性菌など)が混ざって炎症を起こすこともあります。多くは腟・頸管から上へと感染が広がって発症しますが、人工妊娠中絶や子宮内避妊具(IUD)の挿入といった子宮内の器具操作をきっかけに起こることもあります。
PIDは性行為の経験がある女性であれば誰にでも起こりうる病気で、とくに若い年代に多くみられます。症状が強く出て気づかれることもあれば、無症状〜軽い違和感だけで進行することもあり、後者では発見が遅れて卵管性不妊などにつながることがあるため、注意が必要な疾患です。
Symptoms
🔵 こんな症状ありませんか?
一つでも当てはまる方は、早めに婦人科を受診してみてください。
- ✅ 下腹部(骨盤のあたり)の痛みや違和感が続いている
- ✅ 発熱・微熱・悪寒がある
- ✅ おりもの(帯下)の量が増えた、色や臭いがいつもと違う
- ✅ 性交時に下腹部の奥に痛みを感じる
- ✅ 生理以外の時期に不正出血がある
- ✅ 排尿時にしみる・違和感がある
- ✅ 下腹部を押されると痛い、動くと下腹部に響く感じがある
- ✅ クラミジア・淋菌などの性感染症を指摘された・パートナーが感染した
- ✅ 最近、人工妊娠中絶や子宮内避妊具(IUD)の処置を受けた
PIDは、これらの症状がはっきり出ることもあれば、「なんとなく下腹部が重い」程度の軽い症状しか出ないこともあります。逆に、急に強い下腹部痛と高熱が出て動けなくなるような重い経過をたどることもあります。「これくらいなら大丈夫」と我慢せず、続く症状があれば早めにご相談くださいね。
Causes & Transmission
🟡 原因・感染経路とリスク因子
PIDの多くは、腟・頸管にいた細菌が子宮から卵管・卵巣・骨盤腹膜へと上行して起こります。
🟣 主な原因菌
- クラミジア・トラコマチス:PIDの最も代表的な原因です。自覚症状が乏しいまま進行しやすく、気づかないうちに卵管まで炎症が広がることがあります
- 淋菌:クラミジアと並ぶ主要な原因菌です。比較的強い症状(おりものの増加・下腹部痛・発熱)を起こすことがあります
- その他の細菌:大腸菌などの一般細菌や、腟内の常在菌(嫌気性菌など)が混ざって炎症を起こすこともあります。細菌性膣症を背景に発症することもあります
🔵 主な感染経路・きっかけ
- 性感染症(STI)の上行感染:クラミジア・淋菌などが腟・頸管から子宮・卵管へと上へ広がる、最も多い経路です
- 子宮内の器具操作後:人工妊娠中絶・子宮内避妊具(IUD)の挿入・子宮卵管造影などの処置後に、まれに感染が起こることがあります
- 分娩・流産後:産後・流産後の時期に感染をきっかけに起こることがあります
🟤 リスクが高まる要因
- 複数の性的パートナーがいる、パートナーが変わった
- コンドームを使用しない性行為
- 若年(10代後半〜20代)
- 過去にPIDや性感染症にかかったことがある
- クラミジア・淋菌などの性感染症を治療せずに放置している
性感染症が原因となることが多いため、当院の性感染症(STI)ページもあわせてご参照ください。
Diagnosis
診断方法
PIDは症状だけで確定するのが難しい病気です。当院では以下の検査を組み合わせて、総合的に診断します。
① 問診
下腹部痛の部位・程度・続いている期間、発熱の有無、おりものの変化、不正出血、性交痛、生理周期、妊娠の可能性、性感染症の指摘やパートナーの状況、最近の子宮内処置(中絶・IUD挿入など)の有無をお聞きします。プライベートな内容も含みますが、正確な診断のために大切な情報ですので、遠慮なくお話しいただければと思います。
② 内診・触診
内診で、子宮頸部を動かしたときの痛み(子宮頸部可動痛)や、子宮・卵管・卵巣(付属器)のあたりを押したときの圧痛を確認します。これらはPIDを疑う重要な所見です。
③ 経腟超音波検査(エコー)
子宮・卵管・卵巣の状態や、卵管に膿や液体がたまっていないか、卵管卵巣膿瘍を形成していないかなどを確認します。痛みはほとんどなく、数分で終わります。
④ 細菌検査・性感染症(STI)検査
腟分泌物・頸管分泌物を採取し、クラミジア・淋菌などの検査を行います。原因菌を特定することは、適切な抗菌薬を選ぶうえでも、パートナーの治療を進めるうえでも重要です。
⑤ 血液検査
白血球やCRP(炎症反応)などを調べ、炎症の程度を評価します。重症度の判断や、入院・点滴治療が必要かどうかを見きわめる参考にします。妊娠の可能性がある場合は妊娠反応の確認も行います。
Treatment
🔵 治療法
PIDの治療の基本は抗菌薬です。将来の妊娠のためにも、早期に治療を始め、最後まで完了することが何より大切です。
① 抗菌薬治療(基本)【保険適用】
PIDの治療の中心は抗菌薬です。原因菌としてクラミジア・淋菌・その他の細菌をカバーできるよう、複数の抗菌薬を組み合わせて処方することが一般的です。症状が軽い〜中等度の場合は、外来での内服治療が可能です。数日で症状が和らいでくることが多いですが、途中で自己判断でやめてしまうと炎症がぶり返し、卵管に傷が残りやすくなります。症状が良くなっても、必ず処方された期間・量を最後まで飲みきってください。
② 重症例:入院・点滴による治療
高熱が続く、強い下腹部痛で食事や水分がとれない、卵管卵巣膿瘍を形成している、妊娠中である、内服治療で改善しないなどの場合には、入院のうえ点滴による抗菌薬治療が必要になります。当院は外来診療のクリニックのため、入院・点滴治療が必要と判断した場合には、提携医療機関・高次医療機関をご紹介します。状態に応じて適切な医療につなげますので、ご安心ください。膿瘍が大きい場合などには、ドレナージ(膿を出す処置)や手術が検討されることもあります。
③ パートナーの同時治療【重要】
PIDの原因が性感染症の場合、ご本人だけを治療してもパートナーが感染したままだと、治療後にまた感染してしまい(再感染)、炎症を繰り返す原因になります。パートナーに症状がなくても、必ず一緒に検査・治療を受けていただくことが大切です。また、治療が完了するまでは性行為を控えることも再感染の予防につながります。
料金については料金ページをご参照ください。
Self-Care & Daily Life
🟣 日常生活・セルフケア
PIDは適切に治療すれば治る病気ですが、治療の効果を確実にし、再発を防ぐために、日常生活での次のポイントを意識していただければと思います。
抗菌薬は最後まで飲みきる(治療の完遂)
症状が軽くなっても、途中で薬をやめると炎症が残り、卵管に傷が残ったり再発したりする原因になります。処方された抗菌薬は、指示された期間・量を必ず最後まで飲みきってください。飲み忘れや自己中断は避け、気になることがあれば受診時にご相談ください。
治療中は性行為を控える
治療が完了するまでは性行為を控えることが、再感染を防ぎ、炎症の治りを助けます。医師から「治療が完了した」と確認できるまでは、無理をしないでくださいね。
パートナーも一緒に治療を
性感染症が原因の場合、パートナーが治療を受けないと、治っても再びうつされてしまいます。パートナーに症状がなくても、必ず一緒に検査・治療を受けていただくようお伝えください。
再発予防にコンドームを
治療後の性行為では、コンドームを正しく使うことでクラミジア・淋菌などの性感染症の感染・再感染リスクを下げられます。心当たりがある場合は、定期的な性感染症の検査もおすすめします。
体を休め、無理をしない
炎症がある時期は、十分な休養と睡眠をとり、体を冷やさないようにしましょう。下腹部の痛みや発熱が強いときは無理をせず、早めに受診してください。
Risk of Neglect
⚠️ 放置すると起こりうること
⚠️ PIDを放置したり、治療を途中でやめたりすると、将来の妊娠や健康に関わる次のようなリスクがあります。とくに症状が軽い場合ほど油断しがちなので注意が必要です。
- 卵管性不妊:炎症により卵管に癒着や閉塞が起こると、卵子と精子が出会えなくなり、不妊の原因になります。炎症を繰り返すほどリスクは高くなると言われています
- 子宮外妊娠(異所性妊娠):卵管に傷や狭窄が残ると、受精卵が卵管に着床してしまう子宮外妊娠のリスクが高まります。子宮外妊娠は母体にとって危険な状態になることがあります
- 慢性骨盤痛:炎症が慢性化すると、下腹部の痛みや違和感が長く続き、日常生活の質(QOL)を大きく下げることがあります
- 卵管卵巣膿瘍:卵管や卵巣に膿がたまって膿瘍を形成すると、入院・点滴治療や、場合によっては手術が必要になることがあります
- 炎症の再発・重症化:治療が不十分だったりパートナーが未治療だったりすると、炎症を繰り返し、そのたびに卵管へのダメージが蓄積していきます
これらのリスクは、早期に適切な抗菌薬治療を行い、治療を完遂することで大きく減らせます。将来の妊娠を望む方こそ、症状が軽いうちの早めの受診が大切です。妊娠についてのご相談は不妊のページもあわせてご覧ください。
When to Visit
受診のタイミング
- ✅ 下腹部の痛みに発熱(微熱を含む)を伴っている
- ✅ おりものの量・色・臭いに明らかな異常がある
- ✅ 性交時に下腹部の奥が痛む
- ✅ 生理以外の時期に不正出血がある
- ✅ クラミジア・淋菌などの性感染症を指摘された、パートナーが感染した
- ✅ 最近、人工妊娠中絶や子宮内避妊具(IUD)の処置を受けた
- ✅ 下腹部の重さや違和感が続いている
とくに「下腹部痛+発熱」がそろっている場合や、おりものの異常が続く場合、性感染症を指摘された場合は、早めの受診をおすすめします。急に強い下腹部痛と高熱が出て動けないようなときは、我慢せずできるだけ早く医療機関を受診してください。検査で原因がわかれば、その日のうちに治療を始められます。どうぞお気軽にご予約くださいね。
FAQ
🟤 よくあるご質問
Doctor's Message
院長より — 受診をためらっている方へ
「下腹部の痛みくらいで受診してもいいのかな」「性感染症の検査なんて、なんだか受けにくい」——そんなふうに感じて、受診をためらってしまう方は少なくありません。
でも、骨盤内炎症性疾患(PID)は、早く見つけて早く治療すれば、こわがる必要のない病気です。反対に、症状が軽いからと放っておくと、知らないうちに卵管に傷が残り、将来赤ちゃんを望んだときに不妊という形で影響が出てしまうことがあります。私が診療のなかで一番お伝えしたいのは、「気になる症状は、軽いうちに調べておきましょう」ということです。
PIDの多くはクラミジアや淋菌などの性感染症が関係しています。これは決して恥ずかしいことではなく、誰にでも起こりうることです。当院は女性医師による婦人科専門クリニックですので、症状のこともパートナーのことも、安心してお話しいただける環境を整えています。入院や点滴が必要な重症の場合には、提携医療機関へ責任を持っておつなぎしますので、その点もご安心ください。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご予約くださいね。
ふくだあやレディースクリニック 院長 福田 綾(産婦人科専門医)
Clinic Information
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ふくだあやレディースクリニック(本院)
院長 福田 綾(産婦人科専門医)
〒530-0038
大阪府大阪市北区紅梅町1-6 カザリーノビル1階
TEL:06-6354-0088
アクセス
- 大阪メトロ 谷町線・堺筋線「南森町駅」4番出口より徒歩約4分
- JR東西線「大阪天満宮駅」9番出口より徒歩約1分
診療内容(本院)
婦人科・妊婦健診・子宮頸がん検診・医療脱毛など。骨盤内炎症性疾患(PID)・性感染症・下腹部痛・おりもの異常は当院(本院)をご受診ください。入院・点滴治療が必要な場合は提携医療機関をご紹介します。
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※ 本ページの内容は、日本産科婦人科学会ガイドライン・最新の医学的エビデンスに基づき、院長・福田綾が監修しています。個々の症状・治療については必ず医師にご相談ください。