甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)
その不調、更年期や月経のせいだけではないかもしれません。
大阪市北区・南森町の婦人科で、甲状腺の視点からもチェックしましょう。
こんにちは。ふくだあやレディースクリニック院長の福田綾です。
「なぜ婦人科で甲状腺の話を?」と思われるかもしれません。実は、甲状腺の病気は女性にとても多く、月経・妊娠・更年期と深く関わっています。甲状腺ホルモンが乱れると、月経不順・無月経になったり、なかなか妊娠しなかったり、流産や妊娠中のトラブルにつながることがあります。
さらに、甲状腺機能低下症(橋本病)の「疲れやすい・むくむ・冷える・気分が沈む」といった症状や、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の「動悸・発汗・イライラ」といった症状は、更年期障害やPMS、うつ病と非常によく似ています。そのため「歳のせい」「ホルモンバランスのせい」と見過ごされてしまうことが少なくありません。婦人科の診察をきっかけに甲状腺の異常が見つかることも珍しくないのです。気になる不調があれば、遠慮なくご相談くださいね。
What is Thyroid Disease?
甲状腺疾患とは
甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした小さな臓器で、全身の代謝を調節する「甲状腺ホルモン」を分泌しています。甲状腺ホルモンは、体温・心拍・体重・エネルギー代謝・気分・月経など、全身のさまざまな働きに関わる大切なホルモンです。
このホルモンが不足した状態を甲状腺機能低下症、過剰になった状態を甲状腺機能亢進症と呼びます。機能低下症の代表が橋本病(慢性甲状腺炎)、機能亢進症の代表がバセドウ病で、いずれも自分の免疫が甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患です。どちらも女性に圧倒的に多く、とくに20〜50代の女性で見つかることが多い病気です。ホルモンの過不足によって全身に多彩な症状が出るため、婦人科領域の不調と紛らわしいことが特徴です。
Symptoms
🔵 こんな症状ありませんか?
甲状腺の症状は「低下症」と「亢進症」で正反対になります。更年期・PMS・うつと紛らわしいものも多く、一つでも気になる方は一度チェックしてみてください。
◆ 機能低下症(橋本病)で出やすい症状
- ✅ 疲れやすい・だるい・気力がわかない
- ✅ 顔や手足がむくむ・冷えやすい
- ✅ 食欲は変わらないのに体重が増えてきた
- ✅ 便秘がち・肌や髪が乾燥する
- ✅ 気分が落ち込む・やる気が出ない
- ✅ 月経量が多い(月経過多)・月経が長引く
◆ 機能亢進症(バセドウ病)で出やすい症状
- ✅ 動悸がする・脈が速い・息切れする
- ✅ 汗をかきやすい・暑がりになった
- ✅ 食べているのに体重が減る
- ✅ 手が細かくふるえる
- ✅ イライラする・落ち着かない・眠りが浅い
- ✅ 月経が乱れる・量が減る・止まる(月経不順)
- ✅ 首の前側(のどぼとけの下)が腫れている・目が出てきた気がする
これらの症状は、更年期障害・PMS(月経前症候群)・うつ病・自律神経の乱れなどと見分けがつきにくいものばかりです。「なんとなく体調が優れない」が長く続くとき、その背景に甲状腺の異常が隠れていることがあります。気になる方は、血液検査で確認してみましょう。
Hashimoto's & Graves'
橋本病とバセドウ病
代表的な2つの甲状腺疾患を、それぞれの特徴からご説明します。いずれも女性に多い自己免疫疾患で、適切な診断と治療によって症状のコントロールが可能です。
🟣 橋本病(慢性甲状腺炎)— 機能低下のことが多い
甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺の働きが徐々に低下していく自己免疫疾患です。橋本病があってもすぐに機能低下になるとは限らず、甲状腺ホルモンが正常に保たれている方も多くいます。機能低下が進むと、疲労感・むくみ・冷え・体重増加・便秘・気分の落ち込みなどが現れます。女性に非常に多く、月経過多や、妊娠・不妊との関わりが指摘されています。治療では不足した甲状腺ホルモンを補います。
🔵 バセドウ病 — 機能亢進を起こす
甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)ができ、甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまう自己免疫疾患です。動悸・発汗・体重減少・手のふるえ・イライラ・疲れやすさなどが現れ、首の腫れ(甲状腺腫)や眼の症状(眼球突出など)を伴うことがあります。月経が乱れたり止まったりすることもあります。放置すると心臓に負担がかかるため、専門的な治療が必要です。抗甲状腺薬による治療のほか、経過によってアイソトープ治療や手術が選択されることもあります。
なお、甲状腺には橋本病・バセドウ病のほかにも、亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎・甲状腺の腫瘍(結節)などさまざまな病気があります。症状や検査所見に応じて鑑別が必要になりますので、専門的な評価は甲状腺専門医と連携して進めます。
Menstruation, Pregnancy & Fertility
🟡 月経・妊娠・不妊との関係
甲状腺ホルモンは、卵巣の働きや月経周期とも密接に関わっています。そのため甲状腺機能に異常があると、女性特有のさまざまな不調が現れます。
- 月経への影響:機能低下症(橋本病)では月経過多や月経周期の乱れが、機能亢進症(バセドウ病)では月経量の減少・月経不順・無月経が起こることがあります。
- 不妊との関係:甲状腺機能の異常は排卵障害を通じて妊娠しにくさ(不妊)の一因となることがあります。原因がはっきりしない月経異常や不妊の背景に、甲状腺の問題が隠れていることがあります。
- 妊娠との関係:甲状腺機能が適切にコントロールされていないと、流産・早産・妊娠高血圧症候群などのリスクと関連することが知られています。とくに甲状腺ホルモンは赤ちゃんの発育にも関わるため、妊娠初期の管理が重要です。
- 妊娠を考える方は特に:妊娠を希望される方は、妊娠前・妊娠初期に甲状腺の状態を評価し、必要なら治療で整えておくことが望まれます。当院では妊活中の方に、スクリーニング的な甲状腺の血液検査をお勧めしています。
月経不順・無月経・不妊についてくわしくは、月経不順・無月経・不妊の各ページも、更年期症状については更年期障害のページもあわせてご参照ください。
Diagnosis
診断方法
甲状腺の異常は、多くが血液検査で見つかります。当院ではスクリーニング的な血液検査を行い、専門的な精密検査や治療が必要な場合は甲状腺専門医・提携医療機関と連携します。
① 問診
疲労感・むくみ・動悸・体重変化・気分の変化などの症状、月経の状況、妊娠のご希望や妊娠の可能性、ご家族の甲状腺疾患の有無などをお聞きします。婦人科の不調と紛らわしい症状を整理し、甲状腺の評価が必要かを判断します。
② 血液検査(甲状腺ホルモン・自己抗体)
甲状腺の状態を評価する基本となる検査です。甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT4・FT3)を測定して機能低下症・機能亢進症を判定し、必要に応じて甲状腺自己抗体(抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体、バセドウ病を疑う場合はTRAbなど)を調べて、橋本病やバセドウ病といった自己免疫の関与を評価します。当院ではこうしたスクリーニング的な血液検査を行っています。
③ 甲状腺超音波(エコー)検査
甲状腺の腫れ・炎症の状態・しこり(結節)の有無を調べます。結節が見つかった場合など、より詳しい評価が必要なときは、甲状腺専門医・提携医療機関での精密検査をご案内します。
当院は婦人科として、月経異常・不妊・妊娠・更年期症状に関連した甲状腺のスクリーニングを担当します。診断や治療により専門的な管理が必要と判断した場合には、甲状腺専門医・提携医療機関へご紹介し、連携して対応いたします。当院ですべての甲状腺治療が完結するわけではありませんので、その点は診察時にご説明します。
Treatment
🔵 治療法
機能低下症と機能亢進症で治療の方向性は異なります。専門的な管理が必要な場合は、甲状腺専門医・提携医療機関と連携して進めます。
① 甲状腺機能低下症(橋本病)の治療:甲状腺ホルモンの補充
不足している甲状腺ホルモンを、内服薬(レボチロキシンなどの甲状腺ホルモン製剤)で補います。血液検査でTSHやFT4を確認しながら、その方に合った量に調整していきます。適切に補充できれば、疲労感・むくみ・気分の落ち込みといった症状の改善が期待できます。多くの場合、長期にわたって内服と定期的な検査によるフォローが必要です。
② 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療:抗甲状腺薬など
過剰な甲状腺ホルモンを抑えるため、抗甲状腺薬(チアマゾール/メチマゾール、プロピルチオウラシルなど)による治療が基本となります。経過や状況によっては、アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)や手術が選択されることもあります。動悸などの症状に対しては、必要に応じて対症的な薬を併用することもあります。これらの治療は専門的な管理を要するため、甲状腺専門医・提携医療機関と連携して行います。
③ 妊娠時のコントロールの重要性
妊娠中・妊娠を希望される時期は、甲状腺ホルモンを適切な範囲に保つことがとても大切です。使用できる薬や目標とする数値は妊娠の時期によって配慮が必要で、たとえばバセドウ病では妊娠初期に使う抗甲状腺薬の選択に注意を要します。妊娠を考えている方・妊娠中の方は、自己判断で薬を調整せず、婦人科と甲状腺専門医が連携してきめ細かく管理していくことが望まれます。
料金については料金ページをご参照ください。専門的治療のための紹介先については、診察時にご案内します。
Self-Care & Daily Life
🟣 日常生活・セルフケア
甲状腺疾患は、適切な治療とセルフケアによって、多くの方が日常生活を問題なく送ることができます。以下は一般的な心がけです。個別の指導は必ず担当医の説明に従ってください。
内服はきちんと続ける
甲状腺の薬は、決められた量・タイミングで継続することが何より大切です。症状が良くなっても自己判断で中断・減量すると、体調が崩れたり数値が乱れたりします。飲み忘れや疑問があるときは、自己判断せず医師にご相談ください。
定期的な血液検査を欠かさない
甲状腺の状態は時間とともに変化します。適切なホルモンの範囲を保つために、定期的に血液検査を受けてフォローすることが重要です。とくに妊娠を考えている時期や妊娠中は、こまめな確認が必要になります。
ヨウ素の極端な過不足に注意
ヨウ素(ヨード)は甲状腺ホルモンの材料ですが、昆布などに含まれるヨウ素を極端に大量にとり続けることや、逆に極端に避けることは、甲状腺の働きに影響することがあります。うがい薬やサプリメントを含め、極端な摂取は避け、バランスのよい食事を心がけましょう。食事制限が必要かどうかは病気の種類によって異なるため、担当医の指示に従ってください。
生活リズムを整える
十分な睡眠・休養、過度なストレスを避けることは、体調の安定に役立ちます。疲れやすさや気分の変化がつらいときは、無理をせず医師にご相談ください。
Risk of Neglect
⚠️ 放置すると起こりうること
⚠️ 「更年期だから」「疲れているだけ」と甲状腺の異常を放置すると、次のようなリスクがあります。
- 機能低下症(橋本病)の放置:高度に進行すると全身のむくみが強くなる「粘液水腫」に至ることがあります。重症では意識障害(粘液水腫性昏睡)を起こすこともあり、注意が必要です。妊娠中の管理が不十分だと流産・妊娠合併症のリスクとも関連します。
- 機能亢進症(バセドウ病)の放置:心臓に負担がかかり、動悸・不整脈(心房細動)・心不全につながることがあります。強いストレスや感染などをきっかけに、命に関わる「甲状腺クリーゼ」を起こす危険もあります。
- 月経・妊孕性への影響:機能異常が続くと月経不順・無月経が長引き、排卵障害を通じて妊娠しにくさにつながることがあります。妊娠中のコントロール不良は母体・胎児の双方に影響しうるため、早めの評価が大切です。
- 心と体のQOL低下:倦怠感・気分の落ち込み・動悸・イライラなどが続くと、仕事や生活の質が大きく下がります。適切な治療で改善が期待できる症状も多いので、我慢せず相談していただきたいと思います。
When to Visit
受診のタイミング
- ✅ 原因のはっきりしない倦怠感・だるさが続いている
- ✅ 食生活は変わらないのに体重が増えた/減ってきた
- ✅ 動悸・手のふるえ・汗をかきやすさが気になる
- ✅ むくみ・冷え・気分の落ち込みが続く
- ✅ 月経不順・無月経・月経過多など月経の異常がある
- ✅ 更年期かと思っていたが、症状がなかなか改善しない
- ✅ 妊娠を希望している・妊活中で、甲状腺のスクリーニングを受けたい
- ✅ 首の前側(のどの下)の腫れが気になる
- ✅ ご家族に甲状腺の病気の方がいる
「この程度で受診してもいいのかな」と迷う症状こそ、一度調べておくと安心です。甲状腺の血液検査は難しいものではありません。婦人科の不調と重なる症状が続くときは、どうぞお気軽にご相談くださいね。
FAQ
🟤 よくあるご質問
Doctor's Message
院長より — その不調を「歳のせい」で終わらせないで
「ずっと疲れている」「気分が晴れない」「動悸がする」「月経が乱れてきた」——こうした不調を、更年期や忙しさのせいだと思って我慢していませんか。
甲状腺の病気は女性にとても多く、症状が更年期障害やPMS、うつ病とよく似ているために見過ごされがちです。でも、たった一度の血液検査で見つかることも多く、適切に治療すれば体調が驚くほど楽になる方もいらっしゃいます。とくに妊娠を考えている方にとっては、甲状腺を整えておくことがとても大切です。
当院は女性医師による婦人科クリニックとして、月経・妊娠・更年期の視点から甲状腺のスクリーニングを行っています。そして、専門的な治療や精密な管理が必要な場合には、甲状腺専門医・提携医療機関としっかり連携してサポートいたします。当院だけですべてを完結させるのではなく、必要な方を必要な専門医療につなぐことも、私たちの大切な役割だと考えています。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。
ふくだあやレディースクリニック 院長 福田 綾(産婦人科専門医)
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診療内容(本院)
婦人科・妊婦健診・子宮頸がん検診・医療脱毛など。月経異常・不妊・妊娠・更年期症状に関連した甲状腺のスクリーニング的な血液検査は当院(本院)でご相談いただけます。専門的な治療は甲状腺専門医・提携医療機関と連携します。
※ 本ページの内容は、日本産科婦人科学会ガイドライン・最新の医学的エビデンスに基づき、院長・福田綾が監修しています。個々の症状・治療については必ず医師にご相談ください。