マルシロン配合錠|休薬の時期を選べる新しいピル
「1日1錠を24〜80日間続けて飲み、そのあと4日間休む」。
生理を来させる時期を、幅のなかから計画できる月経困難症の治療薬です。
マルシロン配合錠は、月経困難症の治療薬として2026年6月19日に承認され、8月13日に薬価基準へ収載、9月1日に発売された新しい低用量ピル(LEP)です。いちばんの特徴は飲み方で、休薬(=出血が来る時期)を24日目から80日目までのあいだで決められます。当院では保険診療で処方しています(新薬のため、発売から1年間は1回の処方で1シートまでという制限があります)。
こんにちは。大阪市北区南森町 ふくだあやレディースクリニック 院長の福田綾です。
毎月の生理痛がつらくて鎮痛薬を何日も飲んでやり過ごしている。大切な予定と生理が重なるのが憂うつ。そうした思いを抱えたまま「新しい薬が出たらしい」と検索して、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
このページでは、マルシロン配合錠がどんなお薬なのかを、添付文書(お薬の公式な説明文書)の記載にもとづいてご説明します。どのお薬を使うかは診察のうえで医師が判断するものですので、「あなたに合うかどうか」の結論はここでは出しません。診察でご相談いただくための土台になるところまでをお伝えします。
- 有効成分はデソゲストレル0.15mg+エチニルエストラジオール0.02mg(卵胞ホルモンが0.02mgの「超低用量」)
- 飲み方は「24〜80日間の連続服用+4日間の休薬」。休薬の時期を幅のなかから計画できます
- 効能・効果は「月経困難症」のみ。避妊のためのお薬ではありません
- いちばん多い副作用は月経中間期出血(約半数)。重大な副作用として血栓症の記載があります
- 当院では保険診療で処方できます。新薬のため発売から1年間は1回1シートまでの処方となります
About
マルシロン配合錠とは|2026年に登場した月経困難症のお薬
添付文書に記載された薬効分類名は「月経困難症治療剤」。製造販売元はオルガノン株式会社です。処方箋医薬品ですので、医師の診察と処方なしに手に入れて飲むお薬ではありません。
どんな成分でできているか
| 販売名 | マルシロン®配合錠 |
|---|---|
| 有効成分(1錠中) | デソゲストレル 0.15mg(黄体ホルモン) エチニルエストラジオール 0.02mg(卵胞ホルモン) |
| 剤形・色調 | 白色の素錠(直径6mm・厚さ約2.5mm) |
| 包装 | 80錠[20錠(PTP)×4]。シートはすべて実薬で、プラセボ錠(偽薬)は入っていません |
| 効能・効果 | 月経困難症 |
| 診療の区分 | 保険診療(治療目的の処方) |
デソゲストレルは、低用量ピルの分類でいう「第3世代」に位置づけられる黄体ホルモンです。避妊薬のマーベロンと同じ組み合わせの成分ですが、量と目的が異なります(後述)。
「超低用量」とはどういう意味か
ピルは、含まれる卵胞ホルモン(エチニルエストラジオール)の量で呼び分けられることがあります。1錠あたり0.05mg未満を「低用量」、0.03mg未満を「超低用量」と呼ぶのが一般的な整理です。マルシロン配合錠は0.02mgですので、超低用量に相当します。
ただし「ホルモン量が少ないほど体にやさしい」と単純に言い切れるものではありません。量が少ない製剤では、予定外の出血が起こりやすいという面もあります。「量が少ない=すべての人にとって良い」ではない点は、診察でもよくお伝えしています。
Key Feature
【最大の特徴】休薬の時期を24〜80日のあいだで決められます
マルシロン配合錠の用法・用量は、添付文書に次のように記載されています。
1日1錠を24〜80日間連続経口投与し、その後4日間休薬する。以後、連続投与と休薬を繰り返す。
注目していただきたいのは「24〜80日間」という幅です。24日でいったん休むこともできますし、続けて飲んで80日目まで延ばすこともできる、という書き方になっています。つまり、休薬(=生理に相当する出血が来る時期)を、あらかじめ幅のなかから決められる設計です。
これまでのピルの飲み方と何が違うのか
保険で処方される月経困難症のお薬には、飲み方のパターンがいくつかあります。整理すると次のようになります。
| 飲み方のタイプ | 休薬(飲まない日)の決まり方 |
|---|---|
| 固定周期 21日+7日 / 24日+4日 など(フリウェル/ドロエチ、アッリサ など) | 周期があらかじめ決まっていて、毎月ほぼ同じ時期に出血が来る |
| 「フレックス」製剤 ドロエチフレックス など | 3日間続けて出血がみられたら休薬するなど、出血の状況に応じて休薬時期が決まる(最長120日連続) |
| マルシロン配合錠 | 24日目から80日目までのあいだで、あらかじめ休薬時期を計画できる |
連続して飲む期間を長くとれば、出血の回数そのものを減らす飲み方になります。生理のたびに強い痛みが出る方にとって、痛む機会の回数が変わることは大きな意味を持ちます。一方で、長く続けて飲むほど予定外の出血が起こりやすくなる面もあり、どこで休薬するかは診察のなかで一緒に決めていく部分です。
「フレックス」とつくお薬とは、決め方が違います
名前が似ているため混同されやすいのですが、ドロエチフレックス配合錠のような「フレックス」製剤は、「3日間続けて出血がみられたら4日間休薬する」というように、出血の状況によって休薬のタイミングが決まる設計です。
対してマルシロン配合錠は、24〜80日という幅のなかで、あらかじめ休薬時期を計画できる書き方になっています。どちらが上ということではなく、設計の考え方が違うお薬だとご理解ください。実際にどう飲むかは、いずれのお薬でも医師の指示に従ってください。
Comparison
マーベロンとの違い|成分は同じでも、目的も量も違います
「デソゲストレル」と聞いて、避妊薬のマーベロンを思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。有効成分の組み合わせは同じですが、いくつかはっきりした違いがあります。
| 項目 | マルシロン配合錠 | デソゲストレルを含む経口避妊薬(例:マーベロン) |
|---|---|---|
| 効能・効果 | 月経困難症 | 避妊 |
| 卵胞ホルモンの量 | エチニルエストラジオール 0.02mg | 0.03mg |
| 飲み方 | 24〜80日連続+4日休薬 | 21日連続+7日休薬(プラセボ錠を含む28錠タイプもあります) |
| 診療の区分 | 治療のお薬(保険診療の対象) | 避妊のお薬(自費診療) |
いちばん大きいのは「何のためのお薬か」——マルシロン配合錠は、月経困難症という症状を治療するためのお薬として承認されています。
「マーシロン」という表記について
「マーシロン」という名前で見聞きした方もいらっしゃると思います。添付文書に記載されている販売名は「マルシロン®配合錠」です。英語表記が Mercilon のため、これを「マーシロン」と読んだ書き方が使われており、同じお薬を指している場面がほとんどです。
ただし、検索して出てくる中身は同じとは限りません。「マーシロン」で調べると、海外から取り寄せる通販(個人輸入)のサイトが並ぶことがあり、そこでは避妊のための製剤として案内されています。日本で承認されたマルシロン配合錠の効能・効果は「月経困難症」のみで、避妊は含まれていません。厚生労働省も、医薬品を海外からインターネット等で取り寄せることには保健衛生上の危険性があると注意を呼びかけています。詳しくは ネットでピルを買う前に知ってほしいこと もご覧ください。
お薬の名前は、一文字違うだけで別のものを指すことがあります。いまお飲みのお薬やお探しのお薬は、シートやお薬手帳の表記をそのままお伝えください。そこから一緒に整理します。
Indication
効能・効果は「月経困難症」——避妊のためのお薬ではありません
添付文書の「効能又は効果」には「月経困難症」とだけ記載されています。そして「重要な基本的注意」の冒頭には、「本剤を避妊目的で使用しないこと」とはっきり書かれています。この点は必ず押さえていただきたいところです。
そのため添付文書には、飲み始めの最初の1週間はホルモン剤以外の避妊法を用いることという記載もあります。避妊をどうするかは、それ自体を診察でご相談ください。避妊を目的とされる方には、マーベロン・ファボワールやスリンダ(ミニピル)など別の製剤をご案内します。
月経困難症とは
月経困難症は、月経に伴って起こる、日常生活に支障が出るほどのつらさを指します。子宮内膜症などの病気が背景にある場合(続発性)と、はっきりした病気が見当たらない場合(原発性)があり、国内の臨床試験にはどちらの方も含まれていました。
「生理痛は我慢するもの」と思ってこられた方が多いのですが、鎮痛薬を何日も飲む、寝込んで学校や仕事を休む——それは相談していただいてよい状態です。詳しくは 月経痛(生理痛)のページ をご覧ください。
Before You Start
服用にあたって知っておいていただきたいこと
血栓症について
添付文書には、重大な副作用として「血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜等)」が頻度1.0%として記載されています。血栓症は血管の中で血のかたまりができる状態で、生命に関わる経過をたどることがあると説明されています。
そのうえで、過度に怖がっていただく必要はありません。大切なのは「起きたときに気づける状態にしておくこと」です。添付文書には、緊急対応を要する血栓症の主な症状として次が挙げられています。
- 下肢の急激な疼痛・腫脹(ふくらはぎの急な痛み・むくみ)
- 突然の息切れ
- 胸痛
- 激しい頭痛
- 四肢の脱力・麻痺、構語障害、急性視力障害(力が入らない、ろれつが回らない、見えにくい)
これらの症状があらわれた場合は、直ちに服用を中止し、救急医療機関を受診してください。「様子を見てから連絡しよう」と待つ場面ではありません。他の医療機関を受診する際には、このお薬を使っていることを必ず医師に伝えてください。
なお添付文書には、海外の疫学調査として、デソゲストレルを含む経口避妊剤による静脈血栓症は1年間で1万人あたり2人、レボノルゲストレル等の経口避妊剤では1万人あたり1人という報告が紹介されています。あわせて、妊娠による静脈血栓の発症は1年間で1万人あたり6人といわれているとも記載されています。数字は、比べる相手とセットで読んでいただくのが誠実だと考えています。
飲めない方・慎重な判断が必要な方がいます
添付文書には「禁忌」(このお薬を使ってはいけない方)が定められています。主なものを挙げます。
- 35歳以上で1日15本以上たばこを吸う方
- 前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛のある方
- 血栓性静脈炎・肺塞栓症・脳血管障害・冠動脈疾患、またはその既往のある方
- 手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内、長期間安静状態の方
- 乳癌・子宮内膜癌・子宮頸癌およびその疑いのある方、診断の確定していない異常性器出血のある方
- 重篤な肝障害・肝腫瘍のある方、脂質代謝異常のある方、高血圧のある方(軽度を除く)
- 妊婦または妊娠している可能性のある方
また、40歳以上の方、肥満のある方、血栓症の家族歴のある方などは、慎重な判断が必要な方として挙げられています。問診で喫煙や頭痛、ご家族の病歴を細かくお伺いするのは、そのためです。
いちばん多い副作用は「月経中間期出血」です
添付文書の副作用の欄で、5%以上の頻度で記載されているのは「月経中間期出血(50.7%)」と「悪心(吐き気)」です。国内の臨床試験では、12か月時点で209例中132例(63.2%)に副作用が認められ、主なものは月経中間期出血106例(50.7%)、悪心15例(7.2%)と報告されています。
約半数の方に予定外の出血が報告されているというのは、あらかじめ知っておいていただきたい数字です。連続して飲む設計のお薬では起こりやすいもので、飲み方を調整する目安にもなります。出血が長く続く場合には血液検査などを行い、必要に応じて鉄剤の投与や中止を検討すると添付文書にも記載されています。我慢せずご相談ください。
「太るのでは」「飲み忘れたら」と気になっている方へ
体重については、添付文書に「体重増加」が0.1〜5%未満の副作用として、「体重減少」が頻度不明の副作用として、どちらも記載されています。
飲み忘れについては、前日分に気づいた場合は直ちにその1錠を飲み、当日分も通常の時刻に飲むという対処が添付文書に定められています。ただし飲み方はお薬ごとに違いますので、一般論ではなく、いまお飲みのお薬の指示に従ってください。基本的な考え方は ピルの飲み忘れ に整理していますが、迷ったときは自己判断せず当院にご連絡ください。
そのほか、激しい下痢や嘔吐が続いた場合には吸収がうまくいかないことがあること、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品は摂らないこと、一部の抗生物質や抗てんかん薬との飲み合わせに注意が必要なことも記載されています。ほかに飲んでいるお薬やサプリメントは、すべてお伝えください。
Evidence
国内の臨床試験では、どのくらい効いたのか
添付文書には、日本国内で行われた第Ⅲ相試験の結果が記載されています。月経困難症の患者さんを対象に、本剤を飲む群とプラセボ(有効成分を含まない錠剤)を飲む群を比べた試験です。
評価には「月経困難症スコア」が使われました。月経困難症の程度(0〜3点)と鎮痛薬の使用(0〜3点)を合計したもので、点数が低いほど良い状態を意味します。
| 投与前のスコア | 84日後の変化量 | |
|---|---|---|
| マルシロン配合錠の群 | 4.54 | −2.50 |
| プラセボの群 | 4.43 | −0.84 |
両群の差は−1.67(両側95%信頼区間 −2.08〜−1.26)で、プラセボに対する優越性が検証されたと記載されています。「痛みの程度」と「鎮痛薬を飲んだ日数」の両方を含めた点数が、平均して2.5点分下がった——そう読んでいただくとイメージしやすいかと思います。
ただし、これは平均値です。効き方には個人差があり、添付文書にも「期待する効果が得られない場合には漫然と続けず、他の治療も考慮すること」と記載されています。合わなければそのことをお伝えいただければ、ジエノゲストやミレーナ(IUS)なども含めて次の手を一緒に考えます。
At Our Clinic
当院でのマルシロン配合錠の処方について
- 保険診療で処方できます。月経困難症の治療を目的とした処方が対象です(避妊目的では処方できません)。
- 新薬のため、発売から1年間は1回の処方で1シートまでと決められています。そのあいだは受診の間隔が短くなりますので、あらかじめご了承ください(処方日数の制限は解除され次第、当ページを更新します)。
- 初診時は問診と血圧測定を行い、喫煙・片頭痛・ご家族の病歴などをお伺いしたうえで、使えるお薬かどうかを確認します。WEB問診を事前にご記入いただくとスムーズです。
- 添付文書では、服用中は6か月ごとの検診、1年に1回以上の骨盤内の検査が定められています。飲み始めたら終わりではなく、通っていただきながら続けるお薬です。
- 保険診療のピルはご来院での処方となります(オンライン診療は自費ピルのみ対応しています)。
- 「いまのピルから変えたい」「新しく出た薬について聞いてみたい」という段階のご相談も歓迎しています。紹介状は不要です。
※ 発売から間もないお薬のため、流通の状況は変わることがあります。お取り扱いについては診察の際にご確認ください。
FAQ
🟤 よくあるご質問
Summary
まとめ
- マルシロン配合錠は、2026年6月19日に承認・8月13日に薬価基準へ収載・9月1日に発売された月経困難症のお薬です(製造販売元:オルガノン株式会社)
- 有効成分はデソゲストレル0.15mg+エチニルエストラジオール0.02mg。卵胞ホルモンが0.02mgの超低用量に相当します
- 最大の特徴は飲み方。「24〜80日間連続して飲み、その後4日間休薬する」——休薬の時期を幅のなかから決められる設計です
- 効能・効果は「月経困難症」のみ。避妊は含まれていません
- いちばん多い副作用は月経中間期出血(50.7%)。約半数に予定外の出血が報告されています
- 重大な副作用として血栓症(1.0%)の記載があります。ふくらはぎの急な痛み・むくみ、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛などがあらわれたら、直ちに服用を中止して救急医療機関へ
- 当院では保険診療で処方できます。新薬のため発売から1年間は1回1シートまでの処方です
- 処方は医師の判断によるものです。自己判断で始めたり、やめたり、飲み方を変えたりしないでください
ふくだあやレディースクリニックでは、産婦人科専門医が、症状とご希望をうかがったうえでお薬を一緒に選んでいます。「新しく出た薬について聞いてみたい」という段階のご相談も歓迎しています。どうぞお気軽にお声がけください。
Clinic Information
クリニック情報・アクセス・ご予約
ふくだあやレディースクリニック(本院)
院長 福田 綾(医学博士・日本専門医機構認定 産婦人科専門医・FMF認定超音波医)
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診療内容(本院)
婦人科・妊婦健診・子宮頸がん検診・医療脱毛など。マルシロン配合錠など保険適用ピルのご相談は、当院(本院)のピル外来をご受診ください。
※ 本ページの内容は、マルシロン配合錠の添付文書および日本産科婦人科学会のガイドラインに基づき、院長・福田綾が監修しています。個々の症状・治療については必ず医師にご相談ください。