妊娠糖尿病と血糖の再検査
「再検査」は、診断が決まったという意味ではありません。
検査の意味と、わかったときにできることをお伝えします。
大阪市北区・南森町のふくだあやレディースクリニック 院長の福田綾です。
妊婦健診で「血糖が少し高めなので、詳しい検査をしましょう」とお伝えすると、多くの方が不安そうな顔をされます。「甘いものを食べすぎたせいでしょうか」と、ご自身を責めてしまう方もいらっしゃいます。
妊娠中は、誰でも血糖が上がりやすい体の状態になります。このページでは、妊娠糖尿病とはどんな状態なのか、どの検査で何が決まるのか、そして見つかったときにできることを順番にご説明します。
What It Is
妊娠糖尿病とは
妊娠糖尿病とは、妊娠をきっかけに見つかった、糖尿病の診断基準には届かない程度の血糖の高さのことです。妊娠前から糖尿病がある場合や、妊娠中に見つかった「明らかな糖尿病」とは区別して扱います。
なぜ妊娠すると血糖が上がりやすくなるの?
妊娠中は、赤ちゃんに栄養を届けるために、胎盤から出るホルモンの作用でインスリン(血糖を下げるホルモン)が効きにくい状態になります。多くの方は、インスリンをいつもより多く出すことでバランスをとっていますが、追いつかないと血糖が高くなります。妊娠中期以降にこの傾向が強まるため、妊娠中に何度か検査を行います。
年齢が高め、妊娠前の体重が多め、ご家族に糖尿病の方がいる、前回の妊娠で妊娠糖尿病だった、などの方はなりやすいとされていますが、当てはまらない方にも起こります。決して「食べ方が悪かった人がなる病気」ではありません。
血糖が高くても、体の不調として感じることはまずありません。元気でも、勧められた検査は受けておきましょう。
Two Kinds of Tests
「ふるい分け」の検査と「診断」の検査
血糖の検査には、詳しい検査が必要な方を見つけるためのスクリーニング(ふるい分け)と、診断を確定するための検査の2段階があります。結果票を見るときは、どちらの検査の結果かを確認することが大切です。
| 段階 | 検査 | この結果でわかること |
|---|---|---|
| スクリーニング | 随時血糖、食後の血糖、50gブドウ糖負荷試験(50gGCT)など | 基準を超えてもまだ診断ではありません。「詳しく調べたほうがよい」というサイン |
| 診断 | 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) | 結果によって妊娠糖尿病と診断されます |
当院での検査の流れ
- 妊娠初期:随時血糖を測ります
- 妊娠24〜28週:食事の2時間後の血糖を測ります
- いずれかで100mg/dLを超えたら、診断のための75gOGTTへ進むのが原則です
- 妊娠初期の検査で200mg/dLを超えるような高い値が出たときは、75gOGTTは行わずに、妊娠中の明らかな糖尿病の可能性も含めて別に詳しく評価します
- 血糖値が基準内でも、エコーで羊水の量が多い・赤ちゃんの推定体重が大きめ、尿検査で糖が何度も出る、といった場合は75gOGTTをご案内することがあります
75g OGTT
75gOGTTの受け方と診断基準
75gOGTTは、朝食を抜いた空腹の状態で採血し、ブドウ糖75gを含む甘い飲み物を飲んで、1時間後と2時間後にもう一度採血する検査です。全体で2時間ほどかかり、その間は座って過ごします。
次の3つの値のうち、1つでも基準に届くと妊娠糖尿病と診断されます(日本の基準)。
| 採血のタイミング | 基準値 |
|---|---|
| 空腹時 | 92mg/dL以上 |
| 飲んで1時間後 | 180mg/dL以上 |
| 飲んで2時間後 | 153mg/dL以上 |
血糖がさらに高い場合は、「妊娠中の明らかな糖尿病」かどうかの確認も必要になります。結果の数字の意味は、ご自身で判断せず診察で確認しましょう。
検査前日の夕食の時間、当日の絶食・水分のとり方、普段飲んでいるお薬については、受診先の指示に従ってください。つわりが残っていて甘い飲み物が飲めるか心配という方は、事前にご相談ください。
Why It Matters
見つけることで、できることがあります
お母さんの血糖が高い状態が続くと、ブドウ糖が胎盤を通って赤ちゃんに多く届き、次のようなことにつながる場合があります。
| お母さんへの影響 | 赤ちゃんへの影響 |
|---|---|
| 妊娠高血圧症候群、羊水過多、帝王切開になる可能性が高まる | 大きく育ちすぎる(巨大児)、お産のときの肩の引っかかり、生まれた後の低血糖・黄疸など |
早めに気づいて血糖を整えることで、こうしたリスクを減らすことができます。「再検査」は、お母さんと赤ちゃんのために今の状態を確かめる機会だと考えてください。
After Diagnosis
診断されたら — 治療と毎日の過ごし方
① 食事の見直し(中心になる治療)
赤ちゃんの成長に必要な栄養はしっかり確保しながら、血糖が急に上がらない食べ方に整えます。1日の食事を3回から4〜6回に分けて少しずつ食べる「分割食」や、野菜・たんぱく質から先に食べる工夫などを、医師・管理栄養士と相談しながら進めます。
「とにかく食べる量を減らす」のは逆効果です。お母さんの体がエネルギー不足になり、赤ちゃんの発育に影響することがあります。
② 体を動かす
経過に問題がなければ、食後の散歩など軽い運動は血糖を下げる助けになります(妊娠中の運動の目安)。
③ 血糖の自己測定・インスリン
必要に応じて、ご自身で血糖を測って記録していただきます。食事の工夫だけでは目標の範囲に届かない場合は、インスリン注射を使います。インスリンは胎盤を通らないため、赤ちゃんに直接作用することはありません。
診断後の管理は、糖尿病内科や分娩施設と連携して行います。当院で妊婦健診を受けている方は、連携先のご紹介も含めてご案内します。
After Birth
出産後の確認も忘れずに
多くの方は、出産後に血糖が落ち着きます。ただし、妊娠糖尿病を経験した方は、将来2型糖尿病になるリスクが高いことが知られています。
- 産後6〜12週ごろに、あらためてブドウ糖負荷試験を受けることが勧められています
- その後も、健診などで定期的に血糖を確認しましょう
- 次の妊娠を考えるときは、妊娠前に血糖の状態を確認しておくと安心です(プレコンセプションケア)
- 授乳は、お母さんの糖代謝にもよい影響があると報告されています
FAQ
よくあるご質問
Doctor's Message
院長より — 不安なことは、健診のときにそのまま聞いてください
血糖の再検査をお伝えすると、「赤ちゃんに何かあったらどうしよう」と心配される方がほとんどです。でも、妊娠糖尿病は見つけて、整えることができる状態です。早くわかったことは、むしろ安心材料だと思ってください。
検査の準備や食事のことなど、わからないことは一人で抱え込まず、健診のときにそのまま聞いてくださいね。妊婦健診の全体の流れは妊婦健診のページでご案内しています。
ふくだあやレディースクリニック 院長 福田 綾(産婦人科専門医)
Clinic Information
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ふくだあやレディースクリニック(本院)
院長 福田 綾(産婦人科専門医)
〒530-0038
大阪府大阪市北区紅梅町1-6 カザリーノビル1階
TEL:06-6354-0088
アクセス
- 大阪メトロ 谷町線・堺筋線「南森町駅」3番・5番出口より徒歩約3分
- JR東西線「大阪天満宮駅」9番出口より徒歩約1分
このページの内容について
妊娠初期と妊娠24〜28週に血糖の検査を行っています。75gOGTTの準備やつわり中の受け方など、ご不安な点は健診の際にご相談ください。
参考文献・参考情報:本ページは、院長ブログで取り上げたテーマをもとに、以下の学会・公的機関の公開情報や論文を参照して当院が書き下ろしたものです。
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第17章 妊婦の糖代謝異常
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023」CQ005-1
- 日本産科婦人科学会(https://www.jsog.or.jp/citizen/)
- 糖尿病情報センター「妊娠と糖尿病」
※ 本ページの内容は、日本産科婦人科学会ガイドライン・最新の医学的エビデンスに基づき、院長・福田綾が監修しています。個々の症状・治療については必ず医師にご相談ください。